キミといると温かいのがしあわせvv
 

 いい夫婦の日 



日本には語呂合わせの記念日がいっぱいあって
聖人の没した日がことごとく “何とかの日”となっているイエスには
当初はあんまり心臓によくなかったらしいけれど、

「企業が届けて指定となった記念日が大半らしいよ?」

日本語ならではの語呂合わせ。
なので、なぞなぞのような趣もあって、
特徴がある日なぞ、たっくさん記念日が重なるのもご愛嬌。

「11月11日なんて、
 電池の日だったり配線器具の日だったりピーナッツの日だったり、
 そりゃあもう一杯重なってるものね。」

他にも、鮭の日だったりお揃いの日だったり、煙突の日、もやしの日、
忘れちゃいけない“ポッキー&プリッツの日”だったりしますしね。

「どっかの剣豪の誕生日でもあるよね。」
「?? 何か言った?イエス。」
「??? え? 私何も言ってないけど?」

何でもございませんことよ、耳の良いブッダ様。
(天耳通ってテレパスや覚りみたいで、常時開放してたら大変だろね。)
本日 11月22日は、ペットに感謝する日だったり大工さんの日だったりするそうで。
そしてそして、

「イエス、ブッダ、お願いがあるの。」

入力だけは静子お母さんに頼んだらしい、メールで呼び出しを掛け、
徒歩だとちょっぴり距離があるのに、とことことこちらに近い側の公園までやって来た小さなお友達。
人情家な極道ご一家の一粒種、愛子ちゃんが、
こんな小さいのに知ってたほどの知名度を誇るのが、

「今日は夫婦の日だから、とーたんとかーたんにケーキを作りたいの。」
「おおお、何て素晴らしい心がけvv」
「イエス、気持ちは判るけど“祝福せよ”はセーブして。」

気持ちが先走ってセリフだけが先になりました、すいません。
小さな懐へしっかと抱えたムック本には、簡単初めてのケーキという文字が大きく躍っており、
これを手にしていたところを見られておれば、
竜二さんはともかく、静子さんにはピンと察してしまわれてることだろに。
ああでもでも、それが“いい夫婦の日”への贈り物だとまでは判ってないかもだな。

 ご夫婦そろって“なんていい子だ”とぐっと来て、それから
 そんなあのその、いい夫婦だなんて、
 この子ったら意味が判っているものか…なんて、
 赤面しつつお互いにお顔を見合わせ合うのだろうな

なんてことを一気に胸の内にて展開させたその末に、
満面の笑みにお顔をほころばせ、世界中に向けてというハイテンションなノリで
“祝福せよvv”と心声で叫びかかったイエスだったのへ、
こらこら、気持ちは判るけどそんな不意打ちで奇跡を降らせるもんじゃないと、
ブッダが慌てて制止をかけたという次第。

「愛子ちゃん、いつもお父さんとお母さんへ何か贈り物しているの?」
「ううん、今年が初めてだよ?」

結婚記念日は竜二さんが結構律儀に覚えてて、
毎年ちょっと気張ったレストランへ ご馳走食べに行くので何となく知ってたけれど、

「テレビで言ってたの♪」
「そっかぁvv」

蛇が“神と等しき知恵がつくぞよ”とイブをそそのかして食べさせたりんごではないが、
いまや ネット上に記されてることは何でも正しいと誤解する子供らの傾向を正す時代。
愛子ちゃんはまだまだその手前、
テレビで言ってることも みな正しいとは限らないと 知らねばならぬ幼さで。
とはいえ、こんな具合に罪のない範囲でなら構わぬか。
何たって神の子さまでも踊らされること多かりしなのだしと

 “…いや、そこまで思っちゃあいませんが。”

場外から胸の内を読むのはなしですたらと、
釈迦牟尼様からもーりんが釘を刺されたのはともかくとして。(笑)
つるつるの表紙のご本、すべり落とさぬようぎゅうと抱きしめてる幼子の、
無垢な瞳の光にほだされて。
二人の最聖が “勿論協力するとも”と頷首したのは言うまでもなく。

「じゃあ、材料を揃えなきゃだね。」

キッチンはご夫婦に内密に運ぶことも考慮し、聖家のを使うとして、
カップケーキでいいのかな? 小さなシフォンケーキを1ホール作るかい?
ああでも、持って帰るのに途轍もなく緊張せねばならなくなるね
ペトロたちに車を出してもらうかい?
そこまでの大ごとにしちゃあ、ナイショのドッキリじゃあなくなってしまいかねないよ?
あ・そっか、それだと艶消しになっちゃうね、と。
主役であろう愛子ちゃん以上に、お兄さんがた二人が大きに盛り上がってしまい。
それではと、まずは商店街に向かい、
小麦粉と玉子に、家にどのくらいあるか判らないのでとベイキングパウダー、
デコレートに使う生クリームとデコペンチョコを揃え。
可愛らしいラッピングに使おうねと、
レース柄がプリントされたセロファンやリボン、メッセージカードを揃え。

「では、夫婦の日おめでとう、カップケーキの調理にかかります。」
「はいっ。」

子供用エプロンはさすがに用意がなかったので、
イエスの半袖Tシャツを ブラウスとニットベストの上から着てもらい、
それでも余る袖は、袖口から背中へ通したひもで変形のたすきとして引っ張り上げて
簡易の割烹着の出来上がりとし。
粉を合わせて 篩で振るっておいて、
溶かしバターと砂糖を合わせたのへ玉子と生クリームを投入し、
バニラエッセンスを足してから、そこへ粉を少しずつ合わせてゆく。
作業台にしている流し台では愛子ちゃんには高いので、
六畳間のコタツの上へ新聞紙を広げ、
大きいボウルで粉を混ぜるというメインの作業を頑張ってもらい。
天板に並べた紙カップへ生地をちょっとずつ流し込んでもらって、
さあ焼くぞという段階まで。
手慣れたブッダの導きがよかったせいか、案外とテキパキ進んで。
3人揃ってほうとと息をついたのが、妙に可笑しくて吹き出しから、

「さあ、それじゃあお茶にしよっか。」

焼き上がるまでは20分以上かかるからねと、
ちょっぴり粉をかぶっちゃった愛子ちゃんのほっぺや髪を直すのはイエスに任せ。
こたつの上からボウルや何やお道具を引き上げたブッダは、
キッチンも作業の合間に片づけていたらしく、
沸騰ポットで湯を沸かし、さっさかとお茶の支度を整えて。
作り置きのリーフパイとミルクティ、
さあどうぞとこたつの上へ盆ごと手際よく運んでくる。
その段取りがあまりに鮮やかだったのか、

「ブッダってかーたんみたいだvv」

お口を真ん丸に開けて驚いている愛子ちゃんからの賛辞へ、

「や…あのッ、何言ってるかな、愛子ちゃんたら。/////////」

いっそ、もっとたくさんの人が同席していた場なら、
いかにも子供っぽい、率直で微笑ましい発言だと受け止めたうえで、
あらまあそうですか?なんて鷹揚に構えられたかもしれないが。
訊く人がイエスしかいないという場だったのが、妙にあのその
リアルな何かを想起させちゃったようなので。

 頭の回転が早くて察しのいい、賢い人は大変だなぁ、と

そんなよからぬ関心をしたのは、
安心してください、もーりんだけだったのですが。(笑)

「?? ブッダ?」

何を真っ赤になってるの?と、
それもまた ある意味罪作りだったかもな、
やや反応が遅いイエスに訊かれ。
状況の正しい順番が判ってのこと、
ますますと あたふたしかかりつつあった如来様を救ったのが、

 ち〜ん、という

オーブンレンジの焼けましたよの合図の音で。
他でもない釈迦牟尼様が こんなに救われた御鈴の音はなかったことだろと思えたほど、
いかにもほうっと安堵の息をつきつつ胸を撫で下ろしたそのまま、

「さ、さあ、焼けたみたいだよ?」

普段ならイエスがそうなる、
立ち上がっての最初の一歩を何もないとこで躓きかかってから、
あたふたとキッチンの方へ立っていったのは可愛い余禄。
それからずんと経ったあと、寝しなくらいの後になってから

『……っ、ああー、そっかあれって…っ。///////』

とんでもなく脈絡のないタイミングで想いが至り、

ブッダったら可愛い♪
あ・でもそれって 私との間柄を連想したから照れちゃったってこと?
や、やだなぁ、そんな、今更そんな初手のことへ立ち戻るだなんて、
すっかり落ち着いたように見せといて、
まだまだ含羞みまくっちゃうところも多かりしなブッダだなんて、
やっぱり可愛いなぁ〜vv

 “…なんて思ってるんだろうなぁ。////////”

そんな風にブッダへも想起させたのは、
例の首に提げてる指輪がほんわか温まったからか、それとも
音がしそうなくらいに にこにこにこと、
それこそ脈絡なく満面の笑みになったイエス様だったからか。
こちらはそんな『いい夫婦の日』となる予定です、はい♪






   〜Fine〜  16.11.22


 *そういや竜二さんは、奥さんを“静子“と名前で呼びますよね。
  愛子ちゃんがいるのに、ママはともかくお母さんとか呼ばないので、
  まだまだ熱愛夫婦なんだなぁなんて、ほのぼのとイエスが思っておれば、

  「いや、それは単に舎弟の皆さんの手前もあってじゃなかろうかと。」

  そんな腑抜けた言動を見せては面子が潰れるし威容もなくなるので、
  そう呼ぶ習慣がついてるんじゃあと、これはブッダがとうに気付いていたりして。
  (静子さんが“あんた”と呼ぶのも 鉄火肌の姐さんぽくてカッコいいvv)

  それはそうと

  愛妻の日も近いですよね。
  年が押し迫ってくる頃合いに何でこうも重なるかなと思いますが、
  (独り身なのに勝手に記念日に振り回されてる自業自得…)笑
  そうなる直前にねぎらいたいとかいうものか、
  それとも忘年会じゃ年越し準備じゃ帰省の用意じゃと忙しくなる前の
  奥様へのせめてものゴマすりか…。

 *なんて、お暢気な文章を紡いでおれば、
  福島で大きな地震があったそうで。
  しかも津波警報も出ていて、さぞかし怖かったでしょうね。
  どうかご無事でとお祈りいたします。

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